2006年、下北沢の映画館で開かれた、
人形舞台劇「百鬼どんどろ」の公演。
これをきっかけに渡邊世紀監督の
主宰者・岡本芳一への密着取材が始まる。
その作品は『人形のいる風景~ドキュメント・オブ・百鬼どんどろ~』として
2008年に下北沢トリウッドで公開。
岡本氏や関係者へのインタビュー、打ち合わせ風景、
長野で行なわれた公演、さらに独特の幽玄世界を生み出す
「どんどろハウス」への取材から、「百鬼どんどろ」のほかに類いを見ない
表現者の創作の実態に引き込まれる。
「人形のいる風景〜ドキュメント・オブ・百鬼どんどろ〜」
http://movie.geocities.jp/ningyonoirufukei/index.html
通常の岡本氏の演目は、人形を使った華やかな舞いと土から生まれた
舞踏的要素で観る者の心を魅了するが、
ちょうど『人形のいる風景』が公開された年、
今までとは印象の違う作品が生み出された。
それが、舞台作品『VEIN~静脈~』である。
『VEIN~静脈~』には岡本氏演じる「私」と「少女」(人形)が登場する。
互いに傷を持つ二人は、いたわり合いながらも、
決して相手を救うことはできない・・・
顔に包帯を巻いた「私」と、血管が剥き出しの身体を持つ「少女」の
痛々しさが、心の痛みとなって観る者に迫る。
その舞台作品を、岡本芳一氏と渡邊世紀監督が共に
ドラマ仕立ての映像作品とすることを企画。
人形アニメでも3Dでもなく、舞台の記録映像でもない、
人形と演者が映画の登場人物としてドラマを紡ぐ、
映像作品としては今までになかった、全く新しいジャンルである。
しかし「百鬼どんどろ」の岡本芳一氏は、昨年秋より
「骨髄異形成症候群」という難病治療の為、
松本の信州大学付属病院にて闘病していたが、
唯一の治療法である骨髄移植後の経過がはかばかしくなく、
合併症などの為、2010年7月6日午前7時14分、
享年62才にて永眠。
岡本氏は渡邊監督と二人で納得のいくまで編集をし、
この作品の完成を見届けて、亡くなった。
ゆえに、本作品が岡本氏の遺作となる。
また、舞台作品としても上演数は数回となっており、
貴重な作品となった。
ずっと舞台という場所で表現を続けて来た岡本氏が、
最後に映像という、形として残る媒体で作品を遺したことになる。
ジャンル ドラマ、ファンタジー、アートフィルム
完成年 2010年
尺 58分
撮影フォーマット HD 720/24pN(Native)